堀越順子

韓国人男性と国際結婚をして韓国に移住した私は、そのまま韓国で出産することを決めました。

映画の配給会社を経て、韓国作品の配給や韓国関連のイベントなどを手掛ける会社に入り、そこで韓国人の男性と結婚しました。彼が韓国に帰るときに結婚を決意。37歳のときのことでした。韓国語をろくに話せないのに、国際結婚をして韓国に移住するというのは、30代だからこそできたのではないかと思います。

韓国ドラマをかじった程度で韓国語はほとんど話せなかったため、当初は苦労の連続でした。反対方向へ向かうバスに乗ってしまって、さらには帰り道も分からない。言いたいことが相手に伝わらない、という環境はかなりストレスがたまりました。自分ではたいして遅くないと思っていましたが、実際10代、20代の若者に混ざって語学学校で学ぶのは本当に苦痛。習得ペースがまるで違うので、家でも1日4時間ぐらい宿題と予習に費やしていました。1年ぐらい通うとある程度話せるようになり、無事に卒業できたときは感無量でした。

そんな中、30代後半という年齢もあって不妊治療を進めていたところ、不妊治療を始めた翌年、39歳のときに無事に子どもを授かることができました。次に悩んだのは出産をどこでするかです。韓国で産むか日本で産むか。周りにいる在韓の日本人に聞いても韓国で産む人と日本で産む人の割合は半々ぐらい。最終的には韓国の「産後養生院」の存在が決め手となって、韓国での出産を決意しました。

日本では出産の際に産後すぐに実家に帰るというのが一般的ですが、韓国では産後のケアを担う「産後養生院」を利用するのが一般的です。帝王切開の場合は、産後5日程度、産婦人科にいて、その後、産後養生院に移って2週間程度のリハビリ期間を過ごします。私は高齢出産で親も高齢だったため、実家に帰ってもお互い大変。

産後養生院では、ホテルのように3食出してもらえますし掃除も洗濯もやってくれます。必要な道具もすべてそろっているし、未知の世界の新生児との接し方もすべて教えてもらえる。他のママとも知り合えるので、産後養生院を出た後も同じ年頃の子どもを持つ親同士、悩みも共有できます。何年経っても「あんなことがあったね」と思い出を語り合えることもできます。看護師さんもついて毎日マッサージもしてくれますし、産婦人科医も2日に1度、診察に来てくれます。双子だったので2倍の金額で、50万円ほどの費用がかかりましたが、それでも養生院がなかったら生きていけなかったと思えるほど助かりました。

韓国では体外受精は保健所に書類を提出したら即、支援金が下りてすぐに実施することができて感動しました。国の支援も潤沢で、ベビーシッター代の50%は支援金が出ました。月曜日から金曜日まで朝9時から夕方5時頃までいてもらって日本円換算で約20万円。支援金を使って約10万円で利用することができました。産後すぐに、家事と育児を手伝ってくれるヘルパーさんを格安で派遣してくれるシステムもあって、2カ月ほどお世話になりました。韓国では子育ては自分だけでするものじゃない、国で、みんなでするものだという考え方があるようで、ベビーシッターさんから常にそう諭され、その言葉を聞くと1人で育児をしなくてもいいんだ、と気が楽になりました。

子どもを産んだ次の日から家にポツンと1人だったら不安だったでしょうが、産後養生院で他のママたちと一緒に過ごして悩みを共有し、不安も即解消でき、子どももよりかわいいと思えました。韓国で出産できてよかった。

1度目のお産は双子で、そして2度目は43歳での出産ということもあり、余計にありがたかったなと、今、振り返っても思います。

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