いま、世界中で被害が急増している「国際ロマンス詐欺」をご存知だろうか?
SNSを通じて近づいてきて、恋人を装ったメッセージのやりとりを繰り返し、相手がその気になったところで投資を持ちかけたり、「会いに行くお金がない」と言ってみたりして、金銭を騙し取る詐欺のことだ。
数年前から、わたしもFacebookやInstagramでいかにも怪しげな外国人からフォローされたり、メッセージが届いたりすることが増えた。
これまではまったく気に留めることなく、スルーするか即ブロックするかしてきたのだけど、韓国語の勉強を始めて1年、韓国語でコミュニケーションを取りたい欲が増し、ついつい「(自称)韓国人」からのメッセージに返事をしてしまった。
結果的にわたしはお金を騙し取られたりしていないので、おもしろおかしく報告するけれど、「要注意!」「絶対に騙されないでね!」という強い思いを込めて、このコラムを書きたいと思う。
韓国人男性とコミュニケーションを取りたかっただけなのに……
まずは1人め。日本の外資系企業で建設機械加工、貿易業に携わる(自称)セーケン、45歳、独身。
インスタでフォローされたので、フォローバックをしてみたら、メッセージが届いた。
「こんにちは、あなたを知ってとてもうれしい、あなたの注目に感謝します。あなたも日本にいますか?」
それに対して、ここぞとばかりに、ハングルで「アンニョンハセヨ~!」と送ってみるわたし(←韓国語を使いたいだけ)。
「韓国ドラマが好きで、いま韓国語を勉強しています。わたしはイ・ジュンギさんが大好きです。知っていますか?」
「あなたがイ・ジュンギを好きになるとは思わなかった。彼はデビューしたばかりで私たち韓国で一番美しい男とされています」
(→イ・ジュンギ氏は20代前半に『王の男』という映画で美しい芸人の役を演じたことがきっかけでブレイクしたので、そのことを言っている)
おー、これは話が通じるわ!と嬉しくなる。
そこから韓国のスターが住んでいる場所、よく行く焼肉屋などを教えてもらったところで、「LINEを交換しましょう」と言われ、やりとりはLINEにシフト。
何かあればブロックすればいいか、と軽いノリで交換してしまった。←はい、ここ注意ポイントね
(国際ロマンス詐欺の手口① やりとりをすぐにLINEに移行したがる)
名前を聞かれてハングルでも伝えたし、日本語でも「マリエ」と伝えたのに、「メアリー、人形劇のヒロインの名前のようですね」と言われ、セーケンはわたしのことを「メアリー」と呼び続けた(苦笑)。
セーケンとのやりとりは、最終的に10日ほど続いた。
朝「おはようございます」とLINEが来て、夜には「今日は1日楽しかったですか?」と送られてくる。
「何時に寝ますか?」「どんな服が好きですか?」「仕事は何をしていますか?」「独身ですか?」「1人暮らしですか?」
質問がちょっとずつ核心をついてくる。
ハングルと日本語を交えながらやりとりをしていく中で、「お互いのことを知れば恋人になれるかもしれません」みたいなことも言われるようになる。
(国際ロマンス詐欺の手口② すぐに恋愛関係に発展させようとする)
しかし、このセーケン、びっくりするくらいコミュニケーション能力が低い!
例えば、「あなたの過去の話が知りたいです」と聞いてくる。
いやいや、わたしの44年間の人生の何から話せばよいと? もっと具体的に質問してくれよ、とだんだんイライラしてきた(←職業病 笑)。
そうするとわたしの返事も適当になり、仕事で忙しいオーラを出すと、「メアリーはいつもそんなに忙しいから独身なんですか?」とか言ってくる。
失礼だろ!笑
世界中の男性が日本人女性と結婚したがっている?
極めつけは、中秋の名月の日。
朝、セーケンから「今日は月がきれいな日です」とメッセージが来ていたから、「そうなんだな」と思って、わたしもわざわざ月を見上げ、「月がきれいでしたね」と夜早めの時間にLINEをしたのだ。
セーケンは一緒に見たかったのでしょう。
その後、わたしが原稿を書いている時間に、何度かスタンプや「メアリーはいま何していますか?」などのLINEが来ていた。
それを無視して、23時頃、「ごめんなさい。今日も原稿を書いていました」と返事をしたら、「セーケンはメアリーの謝罪を聞きたくない。セーケンはメアリーの付き添いだけが欲しい。セーケンは日本で一人で暮らしているから……云々かんぬん(長いので以下略)」ときた。
あー、めんどくせーなーと思って、
「わたしは自分の仕事とライフスタイルを理解してほしいと願っています。私たちは価値観が違うようですね」と、付き合ってもいないのに、別れ話を切り出すみたいになった(笑)。
すると、
「メアリーの価値観を聞きたいのですが?」
と、またなんかイラっとする感じでくらいついてくる。
「わたしは仕事がとても大事です。夜も仕事をするので、ゆっくり会話をする時間がとれません」
「わかりました。夜メアリーが忙しいなら、仕事の邪魔をしないようにします。昼間の時間はどうやって決めましたか。昼間ヒマな時間があれば、私はメアリーと話します」
バカなの? 夜まで仕事をしている人が、昼間ヒマだと思う想像力のなさよ!(怒)
そこからなんだかんだ押し問答が続き、最後には
「実は世界中のすべての男性が日本人女性を妻にしたいのは、日本人女性が綺麗で善良で、優しくて、家族の世話をしてくれるので、私もあなたと恋愛できることを期待しています」
と言ってきた。
ここでわたしはブチ切れ、
「そうではない日本人女性もいます。ちなみにわたしは善良でもなければ、優しくもありません」と返す。
すると、
「日本の女性は通常、優しさ、思いやり、優雅さとみなされています。 伝統的な文化で受けた教育は、家庭やパートナーへの関心と配慮を強調しており、このような性格特性は男性にとって特に魅力的に見えることが多い。 あと、日本人女性は外見でもイメージを大切にしています。 洗練されたメイクとおしゃれな服装でスタイルを表現することが多く、美への追求は多くの男性の興味を引きました。 日本の文化の中で健康とメンテナンスに対する重視は、多くの日本人女性が青春と活力の面でより優れているように見える」
長い!笑
メアリー「そういうイメージを持ってもらえることは日本人として嬉しいことではありますが、『日本人女性はこうである』というイメージを押し付けられるのは苦痛です。あくまでも総論であって、個人に当てはまるかどうかは別問題だと思います」
セーケン「あなたが優しい女性ではないと思うなら、あなたは他の人に傷つけられたことがあるからハリネズミのような女性になったのかもしれません。自分を偽装して、見ているとすごいですが、強い動物に出会っても、あなたはまだ弱い子供で、守られたいです」
あ、もう無理だなと思い、
「セーケンさんは優しいですね」
と送ってさよならした。
なんでわたし、国際ロマンス詐欺と本気でケンカしているんだろう、という徒労感。
セーケンとのやりとりで思ったことはただ1つ。
――詐欺ならせめて、頭よくあれ!
ケース2につづく。