鴇田玲子

亀山温泉ホテルの女将になる。私にとって、必然ともいえた人生の決断でした。

「こんな山奥に民家があるの?」と驚かれたこともある田舎で幼少期を過ごした私は、都市よりも自然に囲まれた生活のほうが性に合っていると感じていました。大学時代に京都の旅館でアルバイトを始め、卒業後は地元・群馬の伊香保温泉に就職しました。
旅館での仕事は新しいことの連続です。日々新たな出会いや学びのある環境は刺激的で、旅館での仕事は私にとって面白く興味深いものでした。

ルーム係としてお料理を提供したり接客をしたりする部署に所属し、その後、臨時の配置転換でフロント係に異動したことで、当時フロント係を務めていた、現在の夫との接点が生まれました。そのとき、私は24歳で夫は2年先輩。それまでは「実家が旅館を経営している人」程度の認識で、「軽そうなチャラい人」という印象でした。

ところがフロント係で一緒に仕事をするようになると、裏表のない明るくて誠実な性格や天職ともいえる接客技術に惹かれ、お付き合いがスタートしました。ご両親にも付き合ってすぐに紹介され、少しずつ結婚を意識するようになりました。それと同時に、「彼と結婚するということはいずれ旅館の女将になることである」という現実は、旅館業の大変さを身に染みて理解していた私にとっては悩ましいこと。重大な決断でした。

夫がオーストラリアでの1年間のワーキングホリデーを終えて帰って来る日、交際を始めた思い出の公園で会う約束をしました。約束の時間は「日が落ちる頃」。前日に帰国していた彼は早朝に現地入り。真夏の太陽の下「彼女は待ちきれなくて早く来るかもしれない」と1日中待っていたそうです。そんなこととは知らず、私は約束の「日が沈んだ頃」を目指して現地に向かっていました。待てど暮らせど現れない私に「来ないのかもしれない。フラれたのかもしれない」と意気消沈していたところに私が到着したそうです。

「玲子の笑顔を一生隣で見ていたい。俺が一生笑わせてやる!!」

2008年8月、私が26歳、彼が28歳のときの出来事でした。いかにも彼らしいプロポーズ。私は笑って「はい!」と答えました。

翌2009年に結婚、お手伝いからスタートして2018年に女将へ。今は3人の子どもにも恵まれ、にぎやかな毎日を送っています。

台風があったり、コロナがあったり、大変なことがたくさんありますが、亀山温泉は本当に素晴らしい泉質の温泉です。それにアイデアマンの夫の企画力でいろいろと試行錯誤を続ける日々は充実しています。

今後も家族、そして旅館のみんなと力を合わせて亀山温泉ホテルを盛り上げていきたいと思います。


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