加形拓也

たくさんの居場所を持って、バランスを取りながら生きていく。決断を先延ばしにしながら生きてきた自分の、たぶんそれが唯一の決断。

幼い頃から、ものづくりが好きだった自分。ファミコンに熱中する周囲をよそに、僕は壮大なRPGすごろくを作って楽しんでいました。それは世界観の構築からルールの設定まで作り込むノート上の本格ボードゲームで、周囲の友人に大好評。プレイを通じて世界観やルールに微調整を加えながらみんなと作り、最終的にノート20冊分にも及びました。

高校卒業後は東京大学に進学。ところが東大には本当の天才がいて、自分はしょせん田舎の秀才に過ぎなかったんだと挫折。大学卒業後は電通に就職し、マーケティングプランナーとして働きました。「自分で作って考え、検証しながら最適解を目指していく」のは自分の得意なジャンルです。それなのに、電通にはどんな難題にもたちどころに答え、大企業の社長も説得してしまうような本当の天才プランナーが山ほどいる。10年修業してもそんな人たちにかなう気がしなかった。自分が好きで得意と感じたところで負け続ける人生に、どんどん自己肯定感が下がっていきました。

一方で、僕は人一倍興味関心の幅が広く、一度決めたことは投げ出さない性格です。例えば「常に過疎気味な相撲部の部員はどうやったら増やすことができるのか?」という課題には「すでに人が半裸でいるビーチなら、みんな気軽に相撲をとってくれるのでは?」と仮説を立てた。そうして始まった「日本ビーチ相撲」は2008年から20以上のビーチで毎年開催され、協会理事長も務めています。また、東日本大震災を契機に「各地で地域独自の魅力を生かした観光を育てたい!」と考えては、実際に富山県上市(かみいち)町や神奈川県三浦市の自宅でゲストハウスの運営を開始。「都市工学×マーケティングについて学びたい!」と思い付いては東京大学大学院で都市工学の勉強も始めました。

さまざまな分野で仮説を立て、実験し、検証していく。自分にはその特技があって、一社・一競技の天才にはなれなくても、たくさんの居場所で培った経験や人脈を横に展開していくことで新たな価値を生み出し、さまざまな課題に具体的な答えを提示していける――。

現在は、東京と三浦市の二拠点生活をしながら都内のコンサルティング会社に勤務し、NPO法人の代表理事などを務めるパラレルキャリアを実現しています。これからもたくさんの居場所を行き来しながら、縁を繋ぎ、ソリューションを提供していけたらと思っています。


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