伊藤祐

2021年9月、いわゆる「サラリーマン」生活を卒業し、経営者の道を歩み始めました。

慶應義塾大学大学経済学部に進学した私は、大学入学直後から人生に悩み始めることになりました。高校までは卓球に打ち込んでいましたが、大学では単位を取る以外の目標が見いだせなかった。サークルにも入らずニコニコ動画を見てはカラオケで歌い、ビールを飲んで寝る。そんな怠惰な生活を続けていたにも関わらず「自分は受験もうまくいったし、本当は優秀なんだ」という変なプライドだけがありました。

大学卒業後は責任ある仕事を早くから任せてもらえると感じたアクセンチュアに就職。大企業クライアントのインフラ導入プロジェクトでシステム開発などを担当しました。入社1~2年目は優秀な同期たちの中でなかなかうまく仕事ができない自分にもどかしさを感じながら、早朝から深夜まで働き詰めました。一生懸命頑張っても評価されず、自己肯定感は下がり続けるばかり。ところが3年目にシンガポール関連のプロジェクトに参加した際に、尊敬する上司と出会い、彼のおかげで仕事の仕方や考え方を学ぶことができました。その後、その上司とは違う会社でご一緒するチャンスにも恵まれました。
コンサルティングファームで9年ほど働いた後、アドバイザーとしての立場ではなく、次第に自分でもビジネスをやってみたいと思うように。日系のスタートアップは資金調達が仕事のメインになってしまうという懸念やせっかくの語学力が生かせないのではという思いから、2019年11月、外資系のスタートアップの中から「OYO(オヨ)」というインド系ホテル関連企業で社内コンサルティングチームのシニアマネージャーとして働くことになりました。ところが世間はすぐにコロナ禍に突入。その中でさまざまな経験をしていく中で、クリティカルな問題の解決や売上や利益を伸ばしていく最終責任を持つためには、組織のトップになる必要があると気付いたのです。

とはいえ自分はゼロから起業していくタイプではないし、家族もいる。外資系で良質な商品を製造している会社の日本法人の社長になりたいと考え、海外のMBAの勉強を進めていきました。そんな2021年、LinkedIn(リンクドイン )のヘッドハンターから連絡があり、シンガポール発ベンチャーのZenyumが日本上陸を考えており、日本法人の社長を探しているという話を耳にしました。これは絶好のチャンスだと思い、選考を受けることに。創業者とのカジュアルトークやビジネスプラン・採用プランの策定をしてプレゼンをする選考の結果、見事日本法人社長の座を手にすることに成功しました。

Zenyumでは、3Dプリント技術を活用し、低価格・高品質なマウスピースを製造・販売しています。これは、歯列矯正に使われる器具で、日本人にとって馴染みが深いワイヤー矯正よりも安価に短期間で歯列矯正ができるものです。ところが日本ではそもそも歯列矯正への興味関心が薄く、マウスピース矯正についてもほとんど知られていません。なかなか売り上げが伸びない中で本社からは世界の売り上げと比較され、日本法人社内からは売り上げや社内体制への不安の声が聞かれる日々。自分はなんて無能なんだろうと思い悩むこともまだまだ多く、理想とはほど遠い現状です。それでもあの日、すべてが自分の責任となる経営の道に進んでよかったといまでも心から思えるし、日本でマウスピース矯正を啓蒙していくことに社会的意義も強く感じています。これからも謙虚に、誠実に、事業を拡大していければと思います。


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