佐藤社長ショート

70年続く家業を守るため、新規事業として「段ボールでおもちゃを作る!」と決めました。

佐貞商店は1950年に宮城県塩釜市で祖父が創業した会社で、業務用の段ボールを作っています。私は佐藤家の長男として生まれ、当然、後を継ぐのだと刷り込まれて育ちました。
大学卒業後、商社で2年ほど働き家業へ。営業や製造の現場で働いていたのですが、メインの取引先が倒産して売り上げが激減。先代の父親と大ゲンカをして2007年に世代交代しました。

業績悪化に追い打ちをかけるように東日本大震災が起こり、「このまま段ボールを作り続けるだけでは、会社は存続できないな」と強い危機感を覚えるようになりました。
何か新しい事業を開拓しなければ、と悩んでいたある日のこと。娘が通う幼稚園に不要になった段ボールを寄附していたのですが、たまたま幼稚園に足を運んだところ、子どもたちが段ボールで未来都市や乗り物などを作っているのを目にしました。

――なんだ、これは!

大人には到底思いつかない子どもたちの豊かな発想に、大きな衝撃を受けます。

――段ボールは物を入れる箱だという既成概念にとらわれていたけれど、箱にこだわる必要はないかもしれない。

幼稚園の先生や保護者の方といろいろと話す中で、「段ボールでおもちゃを作ってはどうだろう?」というアイデアが生まれました。
その数日後、東京・北区にある赤羽の居酒屋で仲良しのパパ友と昼間から飲んでいたときに、アイデアはどんどん煮詰まっていきました。そうして、ついに私は宣言します。
「俺は、段ボールでレゴブロックを作る! 名付けて、段ブロックだ!」
こうして、なかば酔った勢いで「段ブロックプロジェクト」が立ち上がったのでした。

そこからは、商品化に向けて試行錯誤を繰り返しました。特に大変だったのは、強度を出すことです。段ボールは横目に筋が入っていて弱くなるので、筋目を斜めにするなど製造方法を工夫。段ブロックをつなげる穴の場所と数も研究して、2016年に三角形と四角形の4種類の段ブロックが完成しました。

その後、NPO法人ファザーリング・ジャパンが主催する全国フォーラムの手作りコンテストに出品しデモを行った結果、反響が良く、それをきっかけに大手ハウスメーカーの研修に採用してもらえることになりました。さらに大手ショッピングモールでSDGsをテーマにした催事に使っていただいたり、人気ゲームのプロモーションに採用していただくなど、少しずつ段ブロックを知ってもらえる機会が増えています。

直近では、6月22~23日に大阪の岸和田市で一般社団法人とコラボレーションして、「きしわだ子ども祭り」を開催。5000個ほどの段ブロックを使って岸和田城やだんじりを作る予定です。

段ボールは再生紙で作られているためエコであり、そんな段ボールで作った段ブロックにはさまざまな可能性があります。自治体と一緒に、石垣しか残っていないお城を段ブロックで再現するようなプロジェクトも進められたらと考えています。
段ブロックプロジェクトで目指すのは、単に段ボール製品を作ることでなく、段ブロックを通して人と人の心がつながっていくこと。たとえ言葉の壁があっても、段ブロックがあれば、子どもたちは仲良くなれます。ゆくゆくは、海外でも段ブロックを広めていきたいです。

(構成/尾越まり恵)

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