mさんショート

中学3年生のとき、通信制高校への進学を決めました。

自ら希望して私立中学を受験。入学後の試験で、成績が廊下に貼り出されました。私は学年1位。この体験は私にとって喜びよりも恐怖でした。全生徒に自分が1位だと知られてしまった。次も1番をとらなくてはならないという強迫観念。1番をとるために勉強する。何をしていても勉強のことが頭から離れない。そんな生活が長く続くはずはありません。心身の調子を崩し、中1の冬に私立中学を退学、公立中学に転校しました。しかし、まわりから「私立をやめて戻ってきたヤツ」と思われるのが恥ずかしくて、学校に行けなくなってしまったのです。

毎日を祖父の家で過ごしました。部屋には祖父が購読している新聞が置いてあり、そこには過去のつらい体験を乗り越え、今頑張っている人の話がたくさん載っていました。
――私もまた、頑張れるかな。こんな記事を書く人になりたい。
でも、記者になるためには学校に行く必要があります。そこで、通信制の高校に進むことを決意しました。

単位制の通信制高校には、大人もいれば私と同じ境遇の生徒もいました。シングルマザーで子どもを育てながら勉強している人もいた。自分の悩みなんてちっぽけだと思いました。この経験もいつか書けるだろうか。記者を目指す思いが強くなりました。

そしていま、私は祖父の家で読んでいた新聞を発行する新聞社で、事件担当の記者として働いています。不登校の経験は、私にとって大きなコンプレックスでした。中学生のときは、こんな私が社会に出られるとは思っていなかった。通信制高校に進むというその一歩を踏み出せたことが、私の人生を変えてくれました。

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